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2003.03.17 (月)

「 日本を脅かす中国の存在もまた“米国支持”が必要な理由 」

『 週刊ダイヤモンド 』 2003年3月22日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 486回

北朝鮮の発射したシルクワームの改良型ミサイルが、日本に与える軍事的脅威は小さくとも、長い目で見た場合の政治的影響は大きい。

射程110~160キロメートルといわれる同ミサイルの発射は、金正日政権の生残りへの戦いが、旧式の軍事装備を利用して、いかに政治的な副次効果を生み出していくかにあることを示している。朝鮮半島情勢を長年研究してきた現代コリア研究所所長の佐藤勝巳氏は、北朝鮮が手元に残しているカードは3枚あると指摘する。1枚は、テポドンミサイルの発射、2枚目は、朝鮮戦争休戦協定の破棄の宣言、3枚目は、核兵器保有宣言だという。

「いずれも米国が見過ごすことのできない問題です。テポドンミサイルは、米国のイラク攻撃に合わせて発射すれば、米国および世界に最も効果的に衝撃を与えることができます。北朝鮮は米国が二正面作戦を取れないと読んで、死に物狂いで脅威を演出し、米国を交渉の場に誘い出そうとしているのです」

そのときに問題になるのが、韓国の盧武鉉(ノムヒヨン)大統領である。盧大統領は、どんな場合にも北朝鮮との戦いを回避する構えだ。北と南が連合国家をつくることで、問題を解決しようとの考えだ。2000年6月の金大中・金正日首脳会談に次ぐ盧・金首脳会談は、今年、行われる可能性さえある。

北朝鮮が、戦いよりも金正日政権との融和を優先する韓国から妥協を引き出すには、より強い政治的動揺を与えればよいのだ。

日本が警戒すべき点は、このような状況下で、米国の朝鮮半島政策が変更されることだ。2月3日、ラムズフェルド国防長官は「米軍は、求められなければ駐留しない」と述べた。盧大統領の特使、柳在乾(ユジエゴン)国会議員に、一般論だと断わりながら語ったその言葉の意味は、深刻だ。それからひと月が過ぎた3月6日、ラムズフェルド長官は再び、在韓米軍について述べた。

「韓国は北朝鮮の25~30倍のGDPがあり、対北朝鮮で必要な抑止能力を有している」「われわれの軍隊を帰国させるか、半島のずっと南部に移動させる調整を行うことになる」

東アジアでの安全保障の枠組みが大きく変わるということだ。日米韓の枠組みから韓国が離脱することでもある。

米軍が万が一、朝鮮半島から撤退すれば何が起こるか。ただでさえ親北朝鮮寄りの盧政権は、もっと北朝鮮寄りになるだろう。話合いと善意を強調する韓国に対して、金正日氏は存分に影響力を行使していくだろう。やがて、朝鮮半島全体が、北朝鮮の背後に控える中国の影響下に入っていくと考えなければならない。

もう一つ気になるのは、強硬に反米の立場を貫くドイツのシュレーダー政権に対し、米国防総省内で、NATO軍としてドイツに駐留する5万人の米軍を、他の地域に移す可能性が検討され始めたとの情報だ。

過去の歴史を振り返ると、米国は「内向き」と「外向き」の時期を繰り返してきた。杏林大学教授の田久保忠衛(ただえ)氏は、これを「現実主義」と「理想主義」に関連付けて分析する。米国が理想主義の旗を掲げるとき、彼(か)の国は外向きになり、活発な外交を展開すると考えてよいだろう。

イラク問題の決着の仕方によっては今、外向きの米外交が、大ざっぱな言い方だが、内向きに変わることもあり得る。そのようなケースは、米国が国連外交で敗れ去るときに考えられる。あるいは、米国が力で押し切って、イラク攻撃に踏み切り、フセイン後のイラク統治にも成功すれば、米国は「外向き」外交を再び強めるだろう。

日本を脅かす中国の存在を考えれば、日本にとっての国益は米国の外向き外交にあることは明らかだ。イラク問題で、米国支持が必要な理由である。

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